コヴィディエン アカデミア

人工呼吸管理の基礎 5 人工呼吸器からの離脱

人工呼吸管理は原疾患を治療する上で換気を維持するために必要な管理です。しかし、侵襲を伴うことやそれに付随する合併症の存在(図1)、安全管理上の点(図2)からできるだけ早く離脱しようというのが最近の人工呼吸管理のポイントになります。

図1. 人工呼吸の合併症 図1. 人工呼吸の合併症
図2. 人工呼吸中のトラブル 図2. 人工呼吸中のトラブル

早期離脱を目指すため、各種ガイドラインでも様々な項目が挙げられていますが、下記の項目が主な内容です。

  • 適切な鎮静・鎮痛をはかる
      – 特に過鎮静を避ける
      – 持続鎮静を中断して患者の覚醒を毎日確認する(Sedation Vacation)
  • 人工呼吸器からの離脱ができるかどうか、毎日評価する
      – 自発呼吸トライアル:Spontaneous Breathing Trial:SBT
  • 人工呼吸器からの離脱の手順(プロトコル)を定めて定期的に評価を行う

今回はこれらの項目についてご紹介いたします。

  1. 1.離脱に使用するモード

    まず、人工呼吸から離脱をするにあたり、人工呼吸器の設定として

    • SIMV:強制換気回数を徐々に下げる(図3)
    • SPONT+PS:PSの圧を徐々に下げる(図4)
      という方法がとられます。また、最終段階としてSPONT(CPAP)のみ*、もしくはTピーストライアル(吹き流し)を行い、患者の自発呼吸を十分に評価して離脱につなげます。

    *SPONT(CPAP)のみ;人工気道の抵抗を補正するといわれるPS(サポート圧)5cmH2O程度を付加するケースもある

    図3. SIMV:補助換気回数を変更 図3. SIMV:補助換気回数を変更
    図4. PS:段階的にPSVレベルを減らす 図4. PS:段階的にPSVレベルを減らす

    Tピース、SIMV、PSVの3つの方法(図5)で人工呼吸器離脱までの期間を比較した研究では、SIMVよりPSVの方が離脱までの期間は短かったという結果1)が報告されています。最近では、人工呼吸器装着から離脱まで1つのモードで行えるBiLevelを使用する方法や、呼吸仕事量から離脱に関する情報をアセスメントし離脱につなげるPAV+を使用する方法も実施されています。

    図5. SBT:自発呼吸トライアル 図5. SBT:自発呼吸トライアル
  2. 2.適切な鎮静・鎮痛

    1)過剰鎮静を避ける 日本呼吸療法医学会から人工呼吸中の鎮静のためのガイドラインが発表されています。早期離脱においては過度な鎮静を避けて管理をすることが重要で、過剰鎮静には弊害がある(表1)2)ことを認識し管理をすることが大切です。なかでも、自発呼吸を18~69時間停止することで呼吸筋が萎縮する3)とのデータも報告されており、現在は自発呼吸を温存できる鎮静レベルでの呼吸管理が推奨されています。

    表1. 過鎮静による弊害 表1. 過鎮静による弊害

    2)鎮痛を十分に行う 最近では、鎮静のみならず鎮痛を十分に行う管理法についても注目されています。従来通り鎮静を基本として必要に応じて鎮痛薬を投与した群と、鎮痛を基本として必要に応じて鎮静薬を投与した群の比較によると、鎮痛を基本とした群のほうが人工呼吸期間を有意に短縮したという結果4)が報告されており、鎮痛の重要性が注目されています。また、鎮静薬の使用量の増大とPTSDの関連性についても報告されており、現在は鎮痛コントロールを十分にしながら適切に鎮静を行う方法が推奨されています。

    3)鎮静鎮痛の評価を行う 鎮静や鎮痛の評価については各種スケールがあります。日本呼吸療法医学会での人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン2)では、鎮静評価にはRichmond Agitation-Sedation Scale(RASS)(推奨度B)が、鎮痛の評価にはbehavioral pain scale(BPS)が推奨(推奨度B)されています。鎮静評価は、鎮静の必要性や鎮静状況を適切に評価することにより、人工呼吸器装着日数やICU入室期間、入院期間の短縮が得られ、気管切開の頻度も減少するという報告もあります。過剰鎮静、過小鎮静を防ぐために目標鎮静深度の明確化と共有化が必要であり、スケールを用いてスタッフが客観的に評価できる方法が推奨されています。

    このほか、過剰鎮静を防ぐ方法として1日1回鎮静を中断し管理する方法(sedation vacation)や、鎮痛のみを十分に行い鎮静をしない管理についても注目されていますが、スタッフ数の問題などもあり検討されているところです。

  3. 3.自発呼吸トライアル(SBT)

    1)SBTの有用性 自発呼吸トライアルとは、人工呼吸器からのサポートが最小限の状態(SPONT+PS)、あるいはサポートがない状態(Tピース)で患者の自発呼吸を評価する方法です。人工呼吸器から離脱する際、患者の呼吸状態を評価することが離脱の成否を決定するので、離脱することが可能かを評価することは重要です。人工呼吸器からの離脱についてIMV群、PS群、間欠的にSBTをする群、1日1回SBTを実施する群の4群で離脱までの期間を調査した研究では、IMV群は平均5日、PS群4日、間欠的SBT群3日、1日/回SBT群3日と、SBTを施行した群で離脱期間が短かった4)という結果が報告されており、SBTの有用性が示されています。

    2)SBTの方法 SBTは一般的に1日1回30~120分実施します。
    1日1回SBTを行うのと比べ、1日複数回SBTを行ってもメリットはない4)という報告や、呼吸筋である横隔膜は一度筋疲労を起こすと回復するのに24時間以上かかる5)という報告があること、また、PSV 7cmH2OでSBTを実施した際のSBT実施時間については、30分と120分での抜管成功の割合、48時間以内の再挿管率に差はない6)と報告されており、SBTは1日1回 30~120分の実施が推奨されています。

    3)SBTの成功基準 AARC(米国呼吸療法学会)では、ガス交換能・血行動態・呼吸様式が安定していることをSBT成功の客観的基準としています7)。呼吸の評価として用いられているRSBI(Rapid shallow breathing index)は頻呼吸、浅呼吸の指標とされるもので、f(呼吸回数)/Vt(1回換気量/L)で求めます。基準値として用いられるのがf/Vt<105ですが、感度0.9前後と高いのに対し特異度が0.41~0.81とばらつきが多く、複数の項目を合わせ評価することが大切です。 SBTの開始基準や進め方などは、集中治療医学会の人工呼吸関連肺炎予防バンドル8)に記載されておりますのでそちらをご参照ください。

  4. 4.ウィニングプロトコル

    人工呼吸管理に携わるスタッフが共有・実施することでの有用性が報告されていることから、ウィニングのプロトコル化が推奨されています。ウィニングプロトコルに関するレビュー文献9)では、プロトコルを使用することにより人工呼吸期間を25%短縮、離脱期間を78%短縮、ICU滞在期間を10%短縮(いずれも有意差あり)すると述べられています。また、SBTプロトコルを使用し医療スタッフが離脱を行った群と、医師による離脱群では、離脱の成功率や人工呼吸期間、ICU滞在日数に差はなし10)という結果が報告されており、SBTに関しては、各施設に合ったプロトコルを作成し、定期的に評価をすることで離脱を早めることができると考えられています。
    現在はこれら様々な臨床研究結果から、各施設に合うプロトコルの作成と実施が推奨されています。

  5. 参考文献
    1. Brochard L, et al. Comparison of three methods of gradual withdrawal from ventilatory support during weaning from mechanical ventilation. Am J Respir Crit Care Med 1994;150(4):896-903.
    2. 人工呼吸中の鎮静ガイドライン作成委員会. 人工呼吸中の鎮静のためのガイドライン. 人工呼吸 2007;24(2):146-147.
    3. Levine S, Nguyen T, Taylor N, et al. Rapid disuse atrophy of diaphragm fibers in mechanically ventilated humans. The New England journal of medicine 2008;358(13):1327-1335.
    4. Esteban A, et al. A comparison of four methods of weaning patients from mechanical ventilation. Spanish Lung Failure Collaborative Group. The New England journal of medicine 1995;332(6):345-350.
    5. Travaline JM, et al. Effect of N-acetylcysteine on human diaphragm strength and fatigability. Am J Respir Crit Care Med 1997;156(5):1567-1571.
    6. Perren A, et al. Protocol-directed weaning from mechanical ventilation: clinical outcome in patients randomized for a 30-min or 120-min trial with pressure support ventilation. Intensive care medicine 2002;28(8):1058-1063.
    7. MacIntyre NR, et al. Evidence-based guidelines for weaning and discontinuing ventilatory support: a collective task force facilitated by the American College of Chest Physicians; the American Association for Respiratory Care; and the American College of Critical Care Medicine. Chest 2001;120(6 Suppl):375S-395S.
    8. ICU機能評価委員会. 人工呼吸関連肺炎予防バンドル2010改訂版. 日本集中治療医学会 20106.
    9. Blackwood B, et al. Use of weaning protocols for reducing duration of mechanical ventilation in critically ill adult patients: Cochrane systematic review and meta-analysis. Bmj 2011;342(jan13 2):c7237-c7237.
    10. Krishnan JA. A Prospective, Controlled Trial of a Protocol-based Strategy to Discontinue Mechanical Ventilation. American Journal of Respiratory and Critical Care Medicine 2004;169(6):673-678.

このサイトで提供している情報は、医療関係者を対象としています。
医療関係者以外の方には薬事法上、開示できない内容も含まれており、ご利用を制限させていただいています。日本国外の医療関係者、また一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、あらかじめご了承ください。

あなたは医療関係者ですか?

ページトップへ