コヴィディエン アカデミア

人工呼吸管理の基礎 3 グラフィックについて

  1. 1.グラフィックとは

    最近の人工呼吸器にはグラフィック機能が搭載されています。グラフィックを使用することにより異常の早期発見につなげることもできるので、アセスメントツールの1つとして活用していただけます。
    人工呼吸器のグラフィックには圧-時間曲線(Pressure-Time Curve)、流量-時間曲線(Flow-Time Curve)、換気量-時間曲線(Volume-Time Curve)のほか、圧-換気量曲線(Pressure-Volume Loop)、流量-換気量曲線(Flow-Volume Loop)があります。
    Puritan Bennett™ 840のグラフィックでは、調節/補助吸気が緑色、自発吸気が赤、呼気が黄色で表示され、患者の呼吸を識別することが可能です。

  2. 2.圧-時間曲線:Pressure-Time Curve

    縦軸は回路内圧(大気圧を0cmH2Oとします)、横軸は時間です。PEEPを設定していない場合は、0cmH2Oをベースに、PEEPを設定している場合は設定PEEP値をベースに波形が描かれます(図1はPEEP 5cmH2Oの場合)。
    調節/補助換気の吸気時には、人工呼吸器から吸気ガスが送気されるにしたがって回路内圧は上昇し、吸気時間が終了すると呼気に転じベースラインに戻ります。回路内圧は、VCでは吸気終末が最も高く、PCでは吸気時間中は設定吸気圧を維持します。
    自発呼吸(SPONT/CPAP)時には、吸気開始時に回路内圧はわずかに低下し、呼気開始時はやや陽圧にふれる程度となります。自発呼吸にPSを設定した場合には、自発吸気中は設定されたPS圧を維持するようにガスが送気されるため、PCの波形と類似しています。

    図1. 圧波形 図1. 圧波形
  3. 3.流量-時間曲線:Flow-Time Curve

    縦軸は流量(フロー;V)、横軸は時間を示します。0L/minをベースラインとし、ベースラインより上が吸気フロー、下は呼気フローとなります。VC(矩形波:くけいは)では一定の速さで吸気ガスが送られますが、VC(漸減波:ぜんげんは)では最初に到達したピークフローから徐々に低下します。PC、自発呼吸+PS時は気道抵抗や肺胸郭コンプライアンスに依存して変化しますが、吸気の初期には設定吸気圧に達するように速やかにガスが送気され、到達後には漸減するためVC(漸減波)と類似しています。

    図2. フロー波形 図2. フロー波形

    ■ 矩形波と漸減波 換気様式には換気量を設定して管理するVCと吸気圧を設定して管理するPCがあります(人工呼吸管理の基礎 1 参照)。そしてVCには2つの吸気の入れ方(フローパターン)があります。矩形波は吸気の最初から最後まで設定したピークフロー(ガスのスピード)でガスを送り、漸減波はピークフローから徐々に流量を下げてガスを送ります。
    ピークフローの設定が同じであれば、フローパターンの違いによって吸気時間や最高気道内圧、平均気道内圧が異なります。フローパターンを選択、変更する場合にはピークフローや気道内圧、I:E比に注意が必要です。

    図3. 矩形波と漸減波 図3. 矩形波と漸減波
  4. 4.換気量-時間曲線:Volume-Time Curve

    縦軸は換気量、横軸は時間を示します。0mLより上向きに描かれる曲線が吸気、吸気終了時点からベースラインに向かう曲線が呼気となります。VCでは換気量が規定されているので吸気の高さは常に設定換気量となります。PCでは吸気圧が設定されるため、換気量は症例により変化します。自発、自発呼吸+PSでは自発呼吸パターンやPSレベルによって変化します。

    図4. 換気量波形 図4. 換気量波形
  5. 5.圧-換気量曲線:Pressure-Volume Loop

    縦軸が換気量、横軸が回路内圧を示し、1呼吸で1つのループを描きます。設定PEEP圧を起点とし、強制換気やPSでは左回り、自発呼吸時のみ右回りで描かれます。

    図5. 圧-換気量曲線 図5. 圧-換気量曲線
  6. 6.流量-換気量曲線:Flow-Volume Loop

    縦軸が流量、横軸が換気量を示し、設定PEEP圧を起点とし、吸気フローは上向きに、呼気フローは下向きに描かれます。

    図6. 流量-換気量曲線 図6. 流量-換気量曲線
  7. 7.異常の早期発見

    ■VCでの気道抵抗とコンプライアンスの変化 この圧波形から、PEEP 0cmH2O、最高回路内圧 20cmH2O、プラト圧(肺胞圧)15cmH2Oであることが読み取れます。最高回路内圧は抵抗とコンプライアンスにより生じている圧になりますが、図7の矢印aとbは気道抵抗、矢印cはコンプライアンスにより生じる圧となります。プラト圧は、ガスの流れがない状態で肺胞にかかっている圧になりますので、肺胸郭コンプライアンスを反映しているということになります。

    図7. VCの圧波形 図7. VCの圧波形

    気道抵抗上昇 圧波形:最高回路内圧は上昇しますがプラト圧はほとんど変化がありません(圧較差が大きくなる)。また、時定数の変化により、呼気に要する時間が変化します(矢印)。
    フロー波形:吸気波形は一定値に設定されているため変化しませんが、呼気波形は時定数が大きくなるため最大呼気フローは低下し、呼気時間は延長します。
    換気量波形:一定値に設定されているため変化しませんが、呼気中に次の吸気が入った場合には図のように呼気フローがゼロまで戻らないところから吸気が開始されます(矢印)。

    図8. 気道抵抗上昇(VC) 図8. 気道抵抗上昇(VC)

    コンプライアンス低下 圧波形:最高回路内圧とプラト圧両方の圧が上昇しますが、圧較差はほとんど変化しません。
    フロー波形:時定数が短縮するため、最大呼気フローが増大し、呼気時間が短縮します。

    図9. コンプライアンス低下 図9. コンプライアンス低下

    ■PCでの気道抵抗とコンプライアンスの変化 PCは吸気圧を設定しますので、気道抵抗やコンプライアンスの変化は圧波形で見ることはできません。

    気道抵抗上昇 フロー波形:ガスはスムーズに出入りするのが困難となるため、オーバーシュート様波形を描きます。

    コンプライアンスの低下 フロー波形:吸気時間の途中で圧が設定圧に到達するため、フローがゼロの状態が続き呼気に転じます。
    換気量波形:気道抵抗の上昇もしくはコンプライアンスが低下すると、換気量が減少するため換気量波形の山が小さくなります。

    図10. PCでの気道抵抗とコンプライアンスの変化 図10. PCでの気道抵抗とコンプライアンスの変化

    ■回路からのリーク リーク時に一番わかりやすいのが換気量波形です。吸気で送ったガスが回路外に漏れるため、呼気量(呼気側に戻るガスの量)が減少します。そのため、呼気終了時に波形が0mLのベースラインに戻らず、吸気開始時にベースラインへ補正される波形(矢印)を認めます。

    図11. 回路からのリーク 図11. 回路からのリーク

    ■VCでの設定換気量もしくはフロー不足 VC補助換気時、吸気が図のような圧波形を認め換気量の低下がない(リークが否定される)場合、自発吸気に対して設定フローもしくは設定換気量が不足していることが考えられます。このような波形を確認した際には設定を変更もしくは自発呼吸モードへの変更が必要となります。

    図12. VCでの設定換気量もしくはフロー不足 図12. VCでの設定換気量もしくはフロー不足

    ■結露・喀痰貯留 回路内の大量の結露貯留や気道内の喀痰貯留がある場合、圧波形やフロー波形に細かい揺れを認めます。

    図13. 結露・喀痰貯留 図13. 結露・喀痰貯留

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