コヴィディエン アカデミア

人工呼吸管理の基礎 2 アラームについて

  1. 1.アラーム

    人工呼吸器のみならず医療機器を使用する場合、患者の状態や医療機器自体の異常を発見するために必要なのがアラームです。したがって、アラームが適切に設定され、さらに医療従事者の耳に届く適切な音量に設定されていないと、異常の早期発見や対応の遅れにつながる可能性があります。
    アラームに対する基本的心構えとして以下があげられます。1)

    (1) 使用者はアラームの意味を理解し、適切に設定する。
    (2) アラームを完全にオフにはしない。
    (3) アラーム音を消さない。
    (4) 患者の処置中など、アラーム音が気になる場合は、アラーム休止(一時的にオフ、自動復帰)機構を利用する。
    (5) アラーム発生時は迅速に対処する。

    人工呼吸管理におけるアラームは、救命的アラームと合併症予防アラームの2つに大別できます。

    救命的アラームには最低分時換気量、最低気道内圧、無呼吸、低電圧が、合併症予防アラームには最高気道内圧、最高分時換気量、頻呼吸があります。2)
    なお、Puritan Bennett™ 840のアラームは、優先度を3つに分け警報を鳴らします(図1)。
    臨床で起こる呼吸器本体に関連した異常には、本体故障のほか電源関連、配管関連、チューブ閉塞やリークによる低換気などがあります(図2)。これらの異常を早期発見するためには、人工呼吸器のアラーム設定のみでなく、異常を監視できる生体情報モニタリングが重要となります。さらに緊急事態への対応として、ベッドサイドには用手換気ができるバックバルブマスクやジャクソンリースを常備し、それらを誰でもすぐに使用できるようなトレーニングが必要です。

    図1. Puritan Bennett 840アラーム 図1. Puritan Bennett 840アラーム 図2. 緊急事態 図2. 緊急事態
  2. 2.人工呼吸器本体トラブル時に発生するアラーム(各モード共通)

    ■ AC電源関連アラーム AC電源の電圧が不安定な時や、AC電源が供給されていない時に作動するアラームです。対応策は、AC電源が無停電電源に正しく接続されているかの確認、電源に電圧が供給されているかの確認になります。

    ■ バッテリ関連アラーム バッテリ関連アラームはバッテリ駆動時間の残存時間が少なくなった場合(Puritan Bennett 840の場合 2分以下)に作動します。対応策はAC電源が接続されているかを確認し、AC駆動又は装置の交換をすることです。
    バッテリ駆動時間は人工呼吸器の機種により異なります。また、カタログ上のデータは新品未使用時のデータであり、経年劣化によりバッテリ駆動時間が短くなります。人工呼吸器は生命維持管理装置であるため、必ずAC電源を正しく接続して使用してください。バッテリ駆動時の表示については呼吸器の機種により異なります(図3)。
    バッテリ駆動についてはPMDAより『人工呼吸器を使用中には、AC電源が供給されていることをインジケータなどの表示で常に確認すること』と医療安全情報が出されています。

    図3 図3

    ■ 回路の接続不良 何らかの原因で呼吸器回路の接続が外れてしまった際に作動します。換気ができない状況になるため、回路接続を確認してください。

  3. 3.人工呼吸管理中のトラブル

    人工呼吸器管理中、最も危険な状態は、換気トラブル(換気量低下もしくは中断)です。換気トラブルの原因として

    (1) 人工呼吸器本体の故障
    (2) 電源トラブル
    (3) 自発呼吸との不同調(ファイティングやバッキング、トリガ不全)
    (4) エアリーク(ガスリーク)
    (5) 回路やチューブの閉塞
    (6) 自発呼吸の減少、消失

    などがあげられます。
    換気トラブルを早期に発見するために必要なアラームはモードごとに異なります(図4)。

    図4. 換気トラブル発見のためのアラーム 図4. 換気トラブル発見のためのアラーム
  4. 4.各モード別アラームの原因と対処方法

    1)SPONT(CPAP/自発呼吸) 自発モードは患者の呼吸能力に依存しているため、自身の自発呼吸の回数や1回の換気量が少なくなれば、分時換気量が低下し換気不全に陥ります。特に、鎮静剤や鎮痛剤、睡眠導入剤などが投与されている患者においては、呼吸抑制を起こす可能性があります。
    異常を早期発見するためには、1回換気量、分時換気量、呼吸回数のデータを観察するとともに、換気量アラームの下限値を実測の70%程度に設定して管理します。また、患者の胸郭の動きや呼吸音の聴取が重要となります。

    ■ 換気量下限アラーム 1回換気量下限アラームと分時換気量下限アラームがあります。例えば、1回換気量は保たれていて呼吸回数が減少した場合、分時換気量下限アラームのみが発動し、1回換気量の低下による代償として呼吸回数が上昇している場合、1回換気量下限アラームのみが発動します。臨床では様々な状況が考えられるため、各々のアラームを症例に合わせて設定する必要があります(図5)。

    図5. 低換気量アラームの注意点 図5. 低換気量アラームの注意点

    ■ 無呼吸アラーム 人工呼吸器が吸気を送気したのち、次の吸気を検知するまでの時間(無呼吸インターバル)を設定し、設定時間内に吸気を検知しない場合に作動します。時間の設定とともに、無呼吸時のバックアップ換気設定が適切にされているか確認することも大切です。

    ■ 呼吸回数上限アラーム 1回換気量が十分に得られない場合、代償として呼吸回数が増加することがあります。この状態が続くと呼吸仕事量が増大して呼吸筋疲労をきたし、結果として低換気に移行する可能性がありますので、患者に合わせた適切な設定をする必要があります。

    2)A/C 換気様式により観察項目やアラームが異なります。

    (1) PCV PCVは吸気圧と吸気時間を設定して換気を行うため、患者のコンプライアンスやレジスタンス(抵抗)、リークなどによって換気量が変化します。PCVで管理する場合には実測換気量に注意をしなくてはなりません。

    ■ 換気量下限アラーム 換気量下限アラームの設定値は1回換気量、分時換気量ともに実測の70%~80%程度といわれています。もちろんSpO2やETCO2などの酸素化や換気の指標にも注意が必要です。
    換気量低下を認めた場合には、回路の閉塞やリークがないかを確認します。喀痰の存在が確認されれば、必要に応じて体位ドレナージなどを行い、気管吸引を施行してください。

    (2) VCV VCVは1回換気量と吸気流量を設定して換気を行うため、設定された換気量は維持されます。しかし、リークがあると患者に送気される換気量が減少してしまいます。また、患者のコンプライアンスやレジスタンスによっては回路内圧が上昇する可能性があるため、回路内圧上限アラームの設定が重要となります。機種によって異なりますが、アラーム上限値に達すると肺の圧損傷を防止するために送気を中断(Puritan Bennett 840、760、740の場合)します。そのため、回路内圧上限アラームが続くと低換気になる危険性があります。

    ■ 換気量下限アラーム PCV参照

    ■ 回路内圧上限アラーム 回路内圧上限アラームの設定値は実測値+10cmH2O程度(ただし肺損傷を予防するため35~40cmH2Oを超えない)といわれています。回路内圧上昇を認めた場合、回路の閉塞がないかを確認します。肺コンプライアンスが低下すると肺損傷の危険性があり、さらに先に述べたとおり、機種によってはアラーム上限値に達すると送気を中断し、アラームが継続すると低換気になる危険性がありますので、原因の除去と状況に応じて設定の変更が必要となります(図6)。

    図6. 回路内圧が上昇しすぎると 図6. 回路内圧が上昇しすぎると

    3)SIMV SIMVでは設定された換気回数で自発呼吸に同調させ強制換気を行い、補助換気と補助換気の間は自発呼吸が行えますので、強制換気と自発呼吸両方に対する注意が必要となります。

    ■ 分時換気量下限アラーム 補助調節分時換気量と自発分時換気量を併せた分時換気量を考慮してアラームを設定する必要があります(図7)。補助調節分時換気量よりも低くアラーム値を設定すると、自発呼吸の減少や消失による換気量低下の発見が遅れる可能性があるため、分時換気量下限アラームは、強制/補助分時換気量(設定換気量×設定換気回数)よりも高く設定します。

    図7. 低換気量アラーム設定時の注意点 図7. 低換気量アラーム設定時の注意点

    ■ 無呼吸アラーム ウィニングの方法として、補助換気回数を徐々に減少させて離脱させる方法があります。その際に補助換気サイクルよりも無呼吸インターバルを長く設定すると、無呼吸を検知することがないため、無呼吸インターバルは補助換気サイクルより短く設定します(図8)。

    図8. 無呼吸アラーム設定時の注意点 図8. 無呼吸アラーム設定時の注意点

    参考文献

    1) 医療機器使用者のための警報装置(アラーム)ガイドライン
    2) 人工呼吸器安全使用のための指針 第2版
    http://square.umin.ac.jp/jrcm/contents/guide/page06.html

このサイトで提供している情報は、医療関係者を対象としています。
医療関係者以外の方には薬事法上、開示できない内容も含まれており、ご利用を制限させていただいています。日本国外の医療関係者、また一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、あらかじめご了承ください。

あなたは医療関係者ですか?

ページトップへ