コヴィディエン アカデミア

人工呼吸管理の基礎 1 モード(Basic)

人工呼吸療法の目的と目標

  1. 1.人工呼吸療法とは

    人工呼吸とは換気の補助又は代行をすることで、気管チューブなどの人工気道を留置して管理をする侵襲的換気法と、マスクを用いて管理をする非侵襲的換気法に分けられます。今回は、侵襲的管理法について解説いたします。

    図1. 人工呼吸の分類 図1. 人工呼吸の分類
  2. 2.人工呼吸の役割

    人工呼吸の目的は、適切な換気量の維持、酸素化の改善、呼吸仕事量の軽減であり、呼吸管理の目標は人工呼吸器からのウィニング(離脱)と予後の改善です。この目標に到達するために、合併症の予防と安全管理を十分に行いながら人工呼吸管理を実施することが重要です。
    人工呼吸の管理の対象は生命維持が危機的状況にある(自発呼吸が不足又は消失している)、酸素投与のみでは酸素化が不十分である、強い呼吸努力や呼吸困難感がある場合などです。
    人工呼吸器は、基本的に吸気のサポートのみを行い、呼気は自発呼吸と同様に肺胸郭の弾性によって受動的に行われます。

    図2. 人工呼吸療法の目的と人工呼吸管理の目標 図2. 人工呼吸療法の目的と人工呼吸管理の目標
  3. 3.人工呼吸器の構造

    侵襲的陽圧換気を行う場合、人工気道を挿入し、人工呼吸回路と接続して換気を行います。小児や新生児などの特別な症例以外ではカフを膨張させ、人工呼吸器から送られたガスが外に漏れないようにします。つまり患者は、人工気道、人工呼吸器回路、人工呼吸器を介してしか呼吸ができません。
    人工呼吸器を使用する場合には、電源や圧縮空気、圧縮酸素の配管を接続します。吸気時には吸気弁が開き呼気弁が閉じた状態になり、吸気側の回路を介して吸気動作が行われます。呼気時には吸気弁が閉じ、呼気弁が開くことにより呼気側の回路を介して呼気動作が行われます。
    自発呼吸は受容体で感知した情報に基づき呼吸中枢で換気の指令を出し、呼吸筋で換気運動が行われますが、人工呼吸管理中は、患者の状態や検査データに基づき医師が人工呼吸器の設定を行い、人工呼吸器で換気動作が行われます。したがって、患者の状態を的確にアセスメントすることが重要です。

    図3. 人工呼吸器による換気方法(吸気) 図3. 人工呼吸器による換気方法(吸気)
    図4. 人工呼吸器による換気方法(呼気) 図4. 人工呼吸器による換気方法(呼気)
  4. 4.人工呼吸器の設定

    1)トリガ
    近年、自発呼吸を温存する人工呼吸管理が一般的です。したがって、人工呼吸器はどのようなモードであっても、患者の自発呼吸を検知し、それに同調して吸気を開始します。この吸気を検知するために必要なのがトリガ感度の設定です。トリガには、圧トリガとフロートリガがあります。
    圧トリガは、患者の吸気に伴い回路内圧が低下したポイントを自発と認識します。
    フロートリガは、患者の吸気により、回路内の定常流が減少したポイントを自発と認識します。
    トリガの感度が鋭敏になると、回路の少しの揺れなどの影響を受けるだけで自発呼吸と認識し、吸気を送るオートトリガという状況が起こり得ます。また、感度を鈍くすることで自発呼吸の認識が遅れ(トリガフェイラー、ミストリガ)、吸気に同期できず患者の吸気努力が増すことがありますので、人工呼吸器と患者の呼吸が同調しているかを観察することが大切です。

    2)PEEP(Positive end expiratory pressure:呼気終末陽圧)
    PEEPとは、呼気の終末に大気圧に開放せず、陽圧を保持するものです。陽圧をかけることにより肺胞の虚脱を防ぎ、酸素化能の改善を目的とします。人工呼吸管理中の症例、特に病的肺のある症例では肺胞の虚脱が生じやすくなるので、ほとんどの症例で通常、数cmH2OのPEEPを付加します(図5)。

    図5. 人工呼吸器の設定 図5
  5. 5.モード

    人工呼吸器のモードとは、患者の呼吸を人工呼吸器がどのように補助するかで分類され、強制換気主体のA/C、自発呼吸主体のSPONT、強制と自発を組み合わせたSIMVに大別できます。

    1)自発換気モード(SPONT, CPAP)
    自発呼吸モードは、吸気のタイミングや吸気時間、吸気流量、換気量、呼気のタイミングなど全てが患者に依存します。自発呼吸にはPSなどの機能を付加できます。
    PS(Pressure Support:プレッシャーサポート)
    自発吸気の時間内に、予め設定された圧で吸気を補助するものです。PSを設定すると、人工呼吸との同調性の改善や吸気仕事量を軽減することができます。また、PSの圧を上げると換気量の増大が図れるので、自発呼吸はあるが換気量が不足しているような症例ではPSの圧を上げて対応し、改善した際にはPSの圧を下げることでウィニングにつなげることができます(図6)。

    図6 図6

    【対象】自発呼吸による換気の維持はできているが、酸素化能が十分でない症例が対象となります。ウィニングの前段階として用いる場合も多いのが自発呼吸モードです。
    【観察のポイント】自発呼吸がある症例が対象となるため、一回換気量が十分か、呼吸回数は正常値内か(無呼吸や頻呼吸はないか)、自発呼吸と人工呼吸が同調しているか(トリガ設定が患者の状態に合っているか)を観察します。特に無呼吸に関しては、鎮静剤や鎮痛剤、睡眠導入剤などが投与されていると、無呼吸を起こす患者もいるため、無呼吸アラームの設定を必ず確認します。

    2)補助/調節換気モード(A/C, Assist Control)
    補助/調節換気モードとは、設定された換気量もしくは圧、吸気フロー、吸気時間で換気を行う強制換気のみのモードです。一定時間内に患者の自発呼吸がないと設定された時間間隔(呼吸サイクル)で強制換気を行う「調節換気(Puritan Bennett™ 840では強制と表示)」と、一定時間内に患者の自発呼吸を検知すると吸気に同期して強制換気を行う「補助換気」があります(図7)。

    図7 図7

    換気様式として、換気量と吸気フローを設定して換気を行うVC(従量式)と吸気圧と吸気時間を設定して換気を行うPC(従圧式)があります(図8)。
    VC(Volume Control:VC/従量式)とは、換気量と吸気流量(吸気の速さ)を設定して換気を行う様式です。設定した換気量だけガスを送るので、回路などにリークがなければ設定された換気量は維持できますが、患者の肺や気道の状況によっては圧が上昇し、圧損傷を起こす可能性がありますので、気道内圧の変化に注意が必要です。
    PC(Pressure Control:PC/従圧式)とは、吸気圧と吸気時間を設定して換気を行う様式です。設定した吸気圧を設定した吸気時間維持するようにガスを送るので、設定圧以上の圧の上昇はありませんが、患者の肺や気道の状況によっては低換気や過膨張を起こす可能性があるので、換気量の変化に注意が必要です。

    図8. 換気様式:VC・PC 図8. 換気様式:VC・PC

    【対象】強制換気メインになるので、自発呼吸がないか、もしくは非常に少ない症例が対象となります。よって、術後麻酔や筋弛緩薬から十分に覚醒していない症例や鎮痛鎮静薬の効果により自発呼吸が消失している症例、心肺停止後など換気障害のある症例が対象になります。
    【観察のポイント】自発呼吸がない、もしくは弱い症例が対象となるため、十分な換気量が得られているか、呼吸回数の設定値と実測値に差がないか(自発呼吸が少ない場合には設定換気回数を上げる、自発呼吸が多い時には自発呼吸を温存したモードへ変更)、自発呼吸との同調性は良好かを観察します。

    3)SIMVモード(Synchronized intermittent mandatory ventilation:SIMV)
    SIMVモードは強制換気と自発換気を組み合わせたモードで、設定換気回数で強制(補助)換気を行い、強制換気と強制換気の間は自発呼吸を行うモードです(図9)。

    図9 図9

    【対象】自発呼吸だけでは十分な換気量が得られない症例が対象となります。ウィニングに向けて徐々に設定換気回数を下げることで、自発呼吸の状態に移行する方法があります。
    【観察のポイント】A/C、SPONTを参照してください。

このサイトで提供している情報は、医療関係者を対象としています。
医療関係者以外の方には薬事法上、開示できない内容も含まれており、ご利用を制限させていただいています。日本国外の医療関係者、また一般の方への情報提供を目的としたものではありませんので、あらかじめご了承ください。

あなたは医療関係者ですか?

ページトップへ